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検定試験

検定試験

プロフェッショナルCFO資格試験
(企業価値向上のための財務戦略エキスパート試験)

我が国の重点施策としてのCFO育成に向けた期待

伊藤 邦雄
一橋大学名誉教授

日本企業に求められる「稼ぐ力」

最もイノベーティブな国であるはずの日本企業の収益性がなぜ持続的に低いのか。日本企業が持つ、この矛盾した二面性をどう説明するかと考えたとき、日本企業の持つある非対称性が浮かびあがってくる。それは、顧客市場(商品サービス市場)と資本市場という二つの市場への日本企業の目配り、エネルギーのかけ方が極めて対称的であることだ。顧客市場に対しては耳を澄ませ神経をとがらせ、品質に磨きをかけてきたが、翻って資本市場に対してはどうであろうか。顧客市場と同様にすべきと言うつもりはないが、あまりに資本市場をおろそかにしてきたのではなかったか。「顧客市場での評価が高ければ、資本市場での評価は付いてくる」、どこかでそう思って慢心してきたのではないか。
言い換えれば、日本企業は生産現場での生産性・効率性には敏感だが、「資本効率」を高めようとする意識が希薄であったのではないかと思う。「米国企業のROEが高いのはレバレッジを効かせているからだ」という議論をよく耳にするが、構成要素別の比較を見ると、日・米・欧の企業のレバレッジにはほとんど差がない。大きな格差があるのはROS(売上高利益率、売上高営業利益率)である。日本企業のROEの低位集中は事業収益力の低さが主因であり、日本に求められる「稼ぐ力」とはすなわちこの「売上高利益率」に他ならない。

課題となるCFOの育成

では日本企業はなぜ四半世紀にも及ぶ低迷を続けてきたのか。その原因の一つは、この国のCFO人材の層の薄さにあると思えてならない。かねてから日本企業はトップマネジメントが弱いと批判され続けてきたが、問題なのはCEOの参謀と言われるCFOが育っていないことなのではないか。会社のビジョンや方向性を語るのがCEOであるとすれば、それを実現するための資源配分を差配するのがCFOである。機関投資家もCEOのビジョンを聞いただけでは動かない。CFOが経営資源の裏付けを持って語って初めて、「この会社は企業価値が向上する」と、彼らは判断するのではないだろうか。
コーポレートガバナンス・コード等、昨今はもっぱら他律に焦点があてられているが、それ以前に基本となるのは当然、自律である。自律とは、「ショートターミズムへのけん制と規律」「潜んでいるリスクへの鋭い嗅覚、周りへの覚醒、率先した対峙」「利益の質、劣化へのけん制」「独善の戒め」「誰に仕えているかの絶えざる意識」等であり、この自律を守る最後の砦となるのは、やはりCFOであるべきだと思う。

プロフェッショナルCFO資格プログラムへの期待

CFOの育成を目指して、既に15年も前に設立された日本CFO協会の先見性には目を見張るものがある。そして、日本CFO協会が金融財政事情研究会と共同で開発した教育プログラム「プロフェッショナルCFO資格」は、持続的な企業価値向上を図るためにCFOが必要とする財務実務のエッセンスがうまく凝縮されていて、とても学び易い内容となっている。現役のCFOやそれを目指す人のみならず、真に「稼ぐ力」を生むための事業変革を担う全てのビジネスパーソンにお勧めしたいプログラムである。
またこのプログラムは、銀行をはじめとする金融機関の方々にとってもお勧めできるものである。金融機関が日本企業にとって、その持続的成長を支援する真のアドバイザー足り得るには、企業のガバナンス機能をしっかり強化できるだけの「実践的な」コーポレート・ファイナンスの知識が欠かせない。本プログラムは、それを体系的に身につけるための良い契機となるに違いない。

小生も一橋大学CFO教育研究センターを2015年1月に創設し、東京証券取引所と連携したCFO育成プログラム(HFLP/Hitotsubashi Financial Leadership Program)を開始した。こうしたビジネス・スクールにおいて、より専門的に学ぼうとする企業人にとっても、このプロフェッショナルCFO資格プログラムは、企業財務のエッセンスを体得するための最初のステップとして活用されることをぜひお勧めしたい。

伊藤 邦雄
一橋大学名誉教授

<略歴>
1980年 4月 一橋大学商学部講師
1984年 4月 同大学助教授を経て
1992年 4月 同大学教授
2002年 8月 同大学大学院商学研究科長・商学部長
2004年12月 同大学副学長・理事
2006年12月 同大学大学院商学研究科教授
2015年3月 同大学特任教授・一橋大学CFO教育研究センター長
2018年4月 同大学経営管理研究科 特任教授
2020年4月 同大学経営管理研究科経営管理専攻 名誉教授

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日本を代表する企業の社外取締役を務める。
2014年8月に経済産業省から発表された「伊藤レポート」の取りまとめに当たった。
東京証券取引所・企業価値向上表彰制度・座長 日本証券アナリスト協会・証券アナリスト試験委員。
【主な著訳書】
『次世代リーダー育成塾 経営の作法』・『グループ連結経営』・『コーポレートブランド経営』・『危機を超える経営』・『新・現代会計入門<第2版>』・『新・企業価値評価』(いずれも日本経済新聞出版社)、『医薬品メーカー 勝ち残りの競争戦略』(編著、日本経済新聞出版社)、『会計制度のダイナミズム』(岩波書店)、『無形資産の会計』(編著、中央経済社)、『財務報告革命』(訳、白桃書房)、International Perspectives on Accounting and Corporate Behavior (Springer) などがある。

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